今月、初めて市報しぶしの特集記事を担当しました。
市報では、子どもたちにゴミ分別について伺い、インタビューを掲載しました。(市報記事はコチラ)
志布志市は27品目の分別があり、資源ごみの収集は月に1回。
最初は「面倒くさい!」と思った私を変えたのは、高校生の「別に、面倒くさいと思ったことがない。当たり前だったから」という言葉でした。
ゴミ分別が、当たり前で…別に面倒くさくない、っていう子どもの姿、想像できますか?
私は本当に衝撃で、移住して「面倒くさいな」と思っていたことを恥ずかしいと思うようになりました。
ゴミを当たり前に分別できる「奇跡の世代」を生んだのは、大人たちが頭を使って、考えてごみを出し…
面倒くさいを乗り越えた結果…自然に生まれたものだと思います。
大人たちが何を考え、今のゴミ分別に至っているのか。
奇跡の子どもたちが生まれるまでの「軌跡」を、分別の歴史を良く知る志布志市役所の西川さんと、そおリサイクルセンターの湯地さんに伺いました。
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西川さん(志布志市役所 市民環境課)
ごみ分別が始まって、3年後から市民環境課へ。
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湯地さん(そおリサイクルセンター)
ごみ分別が始まった年に入社。当時は道が覚えられないことに苦労しました。
目次
志布志市が27品目のごみ分別を始めるまで
志布志市のごみ分別とは?27品目の分別に至るまでの軌跡
▲今では、27品目の分別をしています。転入届を出すと、まずこの紙をもらいます。
ー今は27品目の分別をしていますが、分別を始める前はどのようなゴミ出しだったんですか?
- 西川さん
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分別回収前(平成10年以前)は、庭先でゴミを燃やして量を少なくして、
黒い中身の見えないビニール袋に入れて出してください、というゴミ出しでした。
当時は、家庭用の焼却炉を買うのに補助を出していました。
ーええっ!!!!!!!そうなんですか!?今の志布志市とは考えられないくらい違いますね!
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西川さん
- 「黒いビニール袋になんでも入れて良い」から「分別をして中身の見えるビニール袋に、
名前を書いて責任をもってゴミを出してください」となるわけですね。
行政としては、180°方針が変わったようなものです。
ーごみを燃やさず分別をするようになったのはなぜですか?
- 西川さん
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平成2年に作った最終処分場(埋め立て場)は、当時まだ分別をしていないですから…
扇風機も、生ごみも、全部一緒に黒いビニールに入れて埋め立てていたわけです。
このままだとゴミは増え続け…15年も持たずに満杯になってしまうことが分かりました。
大隅全域で一つの焼却炉を作ろう、という協議もありましたが、
当時の背景としてダイオキシン問題が叫ばれていたこともあり、
合併前の志布志町・有明町・大崎町は焼却炉を作る協議会から脱退しました。
焼却炉は維持費もかなりかかります。
今は焼却で良くても、少子高齢化が続くといつかやっていけなくなる時も来ると考え、
分別をすることに決めたんですね。
- 湯地さん
- 埋め立てていたごみを分別するようになったのは、容器包装リサイクル法の施行もきっかけになりますね。
容器包装リサイクル法とは?
容器包装リサイクル法は、家庭から出るごみの6割(容積比)を占める容器包装廃棄物を資源として有効利用することにより、ごみの減量化を図るための法律です。すべての人々がそれぞれの立場でリサイクルの役割を担うということがこの法律の基本理念であり、消費者は分別排出、市町村は分別収集、事業者は再商品化を行うことが役割となっています。(経済産業省HPより引用)
ーなるほど…法律として、家庭ごみの6割を占める容器包装をリサイクルすべし、という法律なんですね。
ゴミを減らすために、消費者も市町村も事業者もそれぞれ役割をもって頑張りましょう、と決まっていたんですね。知りませんでした。
分別が始まってから…理解を深めるための「環境学習」
ー分別を始める前とのギャップがあるように感じますが、市民のみなさまからの反応はいかがでしたか?
- 西川さん
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分別をするということは、とても大きな負担だと思いますが、
最終処分場(埋め立て場)のことも向き合わないといけないことです。
行政としては、最終処分場の状況を市民の皆さんに誠意をもって説明するしかない、
と当時の担当者が説明して回ったと聞いています。
ごみ分別が始まって以降も、市民環境課では、「いつでも・どこでも」をキーワードに
環境学習を行っています。
平成28年度では、76件開催し、1,868人の方が参加されています。
ー76件…!?平日の3日に1日は環境学習をされているんですね。まさに市民のみなさんの理解あっての分別ですよね。
高校生にインタビューを行ったら、ゴミステーションに分別をチェックしてくださる方がいると言っていました。
住民同士のコミュニケーションができているから、志布志市がここまで分別できたのかな、と思いました。
- 湯地さん
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特に生ごみなんて、本当にほとんど異物が入っていないですよ。
毎日10tくらい集まる生ごみが、完全に分別されています。
▲毎日10t運ばれてくる生ごみ。土や木くずをかぶせて、発酵することでたい肥に。ほとんど異物が入っていないとは驚きです。
- 西川さん
- 世界各国から志布志のゴミ分別を見学に来られますが、やっぱり分別するのは難しい。
なかなか、導入まで行ける国はありません。
今までの便利さがあると、どうしてもそれを変えるのはハードルが高いですよね。
志布志市のみなさんがそれをできたっていうのは、本当にすごいことです。
▲スリランカの方々が見学に来られた時の写真。志布志市民にとっては普通のゴミステーションですが、一歩外に出ると見方が変わる。
最終処分場を変えた生ごみの分別。「面倒」から、「ありがとう」へ
ー分別をしててよかった、と思った出来事はありますか?
- 西川さん
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市民環境課に来た年、平成14年の7月から、生ごみのモデル回収をすることになりました。
モデル回収ということで、一部の地域のみなさんにお願いをしに行ったら、
「なんで私たちのところなの?生ごみも分けないといけないとや」「面倒くさい」
という反応だったんですね。
でも、その中の一人が、「まあ、やってみたらいいんじゃない?」と言ってくれて。
まずそれが嬉しかったのを覚えています。
回収日の1日目、ゴミステーションを見に行くと、「面倒だ」と言っていた人が一番最初に来てくれて…
さらに、モデル回収を続けていたら、その人が感謝してくれたんですよね。
生ごみの回収を始める前は、週に一回の一般ごみの袋に入れて回収だったのですが、
月・水・金と週に3日生ごみを回収することになって、「家から生ごみが無くなって嬉しい」って。
それが嬉しかったなぁ。
生ごみを分別回収することで、ゴミは急激に減り、最終処分場も劇的に変わりました。
臭いもしなくなって、ハエもいなくなり…カラスもネズミもいない。
そして、最終処分場の大きな延命になりました。
これは本当に感動でしたね。
▲現在の最終処分場。生ごみが無くなり、臭いもしなくなりました。埋め立てゴミは分別前と比べて8割減。
世界に羽ばたく「志布志モデル」。ごみ分別が地球を救うかもしれない
お金も資源も好循環する「志布志モデル」SDGsに沿った取り組み
- 西川さん
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生ごみを化石燃料で燃やすと、ほとんど水分の生ごみを、
資源とお金を使って燃やすことになりますよね。
お金と資源を使って燃やした結果、二酸化炭素と燃えカスになります。
肥料にすれば、微生物のおかげで有益な肥料に変わり、志布志の土壌を豊かにします。
さらに、燃やすのに使われる化石燃料は、志布志から来たものではないわけですし、
焼却炉を作るお金も大手建築会社に流出しなければならないですよね。
ということは、市民のみなさんからいただいた税収が外に流れてしまいます。
分別という手段を選ぶことで、そおリサイクルセンターさんという
地元のリサイクル業者さんにお金を払って、業者の従業員さんは志布志市に住んでくれる。
人件費に使われることで、地元に雇用を生みます。
ごみを販売することで利益もあり、財政的にも続けていくことができる無理がない取り組みになる。
まさにSDGsに沿った、持続可能な取り組みだと思いますし、地方創生になると思っています。
世界のほとんどでは、焼却をしていない。発展途上国でも手が届く施策
- 西川さん
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これまで、様々な国からの視察があり、様々な国の状況を知ることになりました。
ほとんどの発展途上国では、オープンダンプと言って、なんでもかんでも埋め立てます。
そうすると、野犬が群れを成して生活したり、
ウエストピッカーと言ってゴミを拾って販売して生活する人がいたり…
スリランカでは2017年、積み上げられたごみ山が崩壊し、
巻き込まれた28名が亡くなるという悲劇もありました。
焼却炉を使って焼却するのがこれほど多いのは日本くらいのもので、
世界で見ると、全人口のうち8割の発展途上国、つまり48億人の人々が、そのような状況です。
でも、志布志市のゴミ分別の取り組みは、発展途上国の方々にとっても手が届く施策。
分別をすればお金はかからず最終処分場は衛生的になり、地球温暖化も減らせるわけです。
そういうことを、志布志市から伝えていきたいと思っていますし、
志布志市の人には誇りを持ってほしい。
人口3万人の土地で、こういった取り組みができているということを前例に、
日本、世界と広がっていってほしいですね。
▲志布志市はこれまで、パプアニューギニア、ソロモン、フィジー、スリランカ…など10か国に志布志モデルを推進しました。志布志の当たり前が、誰かの命を救う取り組みになるかもしれません。
ー西川さん、湯地さん、ありがとうございました!
取材を終えて
「別に面倒じゃないよ」という子どもの姿に衝撃を受けてから、ずっと考えていました。
志布志市、すごくない?と。
志布志市で生まれた子どもたちが、当たり前といって分別できるということ。
さらに、今回のインタビューで高校生から聞いた「時々ちょっと負担になるけど、志布志市がきれいだと思う」
これって本当に本当に、尊いことだと思うんです。
ふるさとがきれいであることを子どもたちが知っているって、ふるさとの在り方としてこれ以上のことは無いと思います。
ただ、志布志市のすばらしさに驚きながら、これをどうやってお伝えしたらいいのか、悶々としていました。
今回、西川さんと湯地さんにお話を伺ったのは、上記のような感情的だけでなく、理性的にもゴミ分別について知りたかった気持ちがあります。
市民のみなさんからいただいた税金を市内に循環できる施策であることや、世界の8割を占める発展途上国・さらには地球を救うための一環に携わっているという実感。
そして、私の子どもが一生懸命分別したゴミを、ちゃんとリサイクルしてくれる市なんだ、という安心感。
「面倒くさい」という黒い気持ちは、他を知っているとどうしても0にはなりませんが、
今はそれを上回る、志布志市民である誇りと安心感が包んでいるような気持ちです。
環境って、自分ひとりで壊しているわけでもないし、自分ひとりで救えるわけでもないと思います。
けれど、人口3万人の志布志市が取り組んでいるこの取り組みは、子どもたちが当たり前、といって分別するなら…圧倒的に正義だと思うんです。
移住者としての一意見が、誰かに届きますように。
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